新潮45(1998年10月号)

Posted 2014-07-18

新潮45私は、なんでも捨てます。捨て捨て大魔王、片付けの鬼です。作品の制作のために集めた資料も、作品が完成すれば捨てます。集めた資料から吸収できたことは、作品へ注入したと考えるからです。後日、もし捨てた資料が必要となれば、記憶から引き出します。記憶は変形されていますが、変形できるということは理解できたことだと、私は考えます。
版画制作室はガランとしていますが、書斎兼寝室は本だらけです。本は捨てません。しかし私には、私が好きな本を人にあげる良い癖があります。そのため同じ本を何度も買う始末になるのですが、雑誌は一読すると捨てます。雑誌が悪いのではなく、私の悪い癖です。私の悪癖の例外が、この文芸誌です。この詩人の絶筆は、今も私を捉えます。この言葉を、私は消化できません。だから今後も、この雑誌は捨てません。