風の歌を聴け
Posted 2014-01-19村上春樹。氏のデビュー作。「処女作には、その作家のすべてが表れる」と言われます。私は村上春樹氏のこの一冊よりも私自身を振り返り、この意見に半ば同意します。私の版画処女作は『因幡の国のアリス』です。今の私から見ると、技術も未熟で方向も定まっていませんが、今の私にこれと同じものを作ることはできません。技術や企画よりも大切なものが、作品には表れます。私のすべてがデビュー作に表れていたのかどうか。新手一生と念じて指す次の一手は、枝葉は茂っても根本のところで、今も昔も同じ私です。
追記:この本については、何年か前の夏の終わりの夜に、阪神間の海沿いを走る電車の窓から、山の手の町の灯りを見たときに、ああ、この小説の光景はこれだったのか、と思いを馳せました。あの灯りのひとつひとつに、命があるのだな。犬の漫才師よ。