わが西遊記
Posted 2011-01-10
中島敦。三蔵法師と悟空、八戒、悟浄の冒険物語を、カッパの悟浄が独白で語る短編。のろまで愚図な悟浄が、自己及び世界の究極の意味に就いて、悩み迷い、遍歴する。あるとき彼の苦悩の前に菩薩が現れ得度し給う。「世界は、概観による時は無意味の如くなれども、其の細部に直接働きかける時始めて無限の意味を有つのじゃ。悟浄よ」。わたしも悩める悟浄です。わたしも、彫刻刀の研ぎ加減を陽に透かしたり、版画の細部に目を凝らして腰を浮かせて彫る時に、この啓示を思い出します。神は細部に宿る、のでしょう。