駆け込み訴え
Posted 2012-10-27
太宰治。この短編集に収められる一つの小説を、吉本隆明は「新約聖書を理解した日本の文学作品としては最上のもの」と評した。作者不詳のイエスの物語は、この世の最後まで人類の想像力を刺激してやまない。おそらく個人ではなく複数の作者による『聖書』をめぐって、古今東西の個人作家がぶつかり稽古をして、その敗けてゆく過程を記述するのが文学だ、と色川武大は論じた。私の専攻分野でいうと、作者不詳、制作期不明の奈良の仏像を見にでかけ、手も足もでない。この敗けてゆく過程が私の作品制作です。