
ぬすつと犬めが、 くさつた波止場の月に吠えてゐる。 たましひが耳をすますと、 陰気くさい声をして、 黄いろい娘たちが合唱してゐる、 合唱してゐる。 波止場のくらい石垣で。 いつも、 なぜおれはこれなんだ、 犬よ、 青白い・・・・[続きを読む]
西藤博之公式サイト
ぬすつと犬めが、 くさつた波止場の月に吠えてゐる。 たましひが耳をすますと、 陰気くさい声をして、 黄いろい娘たちが合唱してゐる、 合唱してゐる。 波止場のくらい石垣で。 いつも、 なぜおれはこれなんだ、 犬よ、 青白い・・・・[続きを読む]
木彫刻をつくる前は立方体の木材です。この立方体のなかにあるものを彫り出す、いわば発掘作業が私の彫刻制作です。下書きはあるようでない。木材の上に線を引いたところで叩きノミの一撃で消し飛びます。彫りながら出たとこ勝負で彫り進・・・・[続きを読む]
太宰治。この短編集に収められる一つの小説を、吉本隆明は「新約聖書を理解した日本の文学作品としては最上のもの」と評した。作者不詳のイエスの物語は、この世の最後まで人類の想像力を刺激してやまない。おそらく個人ではなく複数の作・・・・[続きを読む]
池内紀=編訳。「カフカ伝説」というものがある。発表するあてのない小説をこつこつ書きつづけて、無名のまま自らの死が近づいたとき、友人に作品一切の焼却を依頼した。この友人はカフカの依頼を裏切った。そのため私たちはカフカを読む・・・・[続きを読む]
開高健とC.W.ニコル。立木義浩の写真が挿入される二人の小説家の対談録。この本から学んだことは多いが、もっとも影響を受けたのは酒の銘柄。私はバーで飲むとき、スコッチはグレンリベット12年に決めている。数多くのスコッチを飲・・・・[続きを読む]
西井一夫。西井さんとはじめて会ったのは2000年8月のグループ展の会場だった。西井さんは自身の記録と記憶を作品として出展されていた。その作品は最終日に西井さん自身の手で燃やされた。当時、西井さんは「シリーズ20世紀の記憶・・・・[続きを読む]
『百鬼夜行絵巻』をめくっていると、500年前の絵巻物のなかにストーンズがいました。この画の赤い舌をべろりと出している鬼は、16世紀のストーンズに違いないと私には思えます。思ったからには作品にします。仏像を基礎に版画を制作・・・・[続きを読む]
森敦。私にはこの本と、一冊の読書以上の経験があります。1999年3月、新宿ゴールデン街でグループ展が企画されました。一作家は一店舗に展示と紹介された私の担当酒場に「未だ生を知らず 焉ぞ死を知らん 森敦」の書が貼ってありま・・・・[続きを読む]
武田泰淳。この長編小説の冒頭の「神の餌」と題された序章で、著者は早くも巨大な問題に触れている。山麓に住む著者は、森林に棲むリスには餌をやり、屋内のネズミには殺鼠剤をまく。なぜリスが可愛くてネズミが可愛くないのか?片一方は・・・・[続きを読む]